point de rencontre 2

Daesung Lee さん
daesunglee copier.jpg
Daesung Leeさんは、フリーランスのフォトジャーナリストとして、故郷の韓国を離れ、現在はパリを拠点に、カメラを手に世界各地を取材しています。
今回は、年明けからのネパールへの取材から帰ってきたばかりのDaesungさんのお宅にお邪魔して、お話を聞きました。
写真にまつわる最初の思い出は?
―15歳かそれよりも以前、家族で動物園のようなテーマパークに一緒に行った時。その時、カメラを手にしたことさえなかったのに、ふと突然、本当に突然、家族のポートレイトを写真に撮りたい、と思ったんだ。なぜかは分からないけれど。
写真を始めたのは?
―写真を撮り始めたのは、その後、高校のクラブ活動。その頃から、カメラを持って、街を歩き回りながらいろんな写真を撮るようになったんだ。
 その後、高校の最終学年で、進路を決めなければならなかった。でも、正直言って、自分が将来何をやりたいのか分からなかった。でも、写真には興味があったから、写真のコースのある大学に進学することにしたんだ。
 でも、その大学に入っても、やはり学校の勉強は自分にはとても退屈だった。机に向かう勉強よりも、もっと実践的なことをやりたかった。 だから、自分でやることにしたんだ。 アルバイトをして、旅費を貯めて、外国へ撮影旅行に行くようになった。 そうそう、その学校のよかったところは、留学制度が充実していたところだったな。 それを利用して、ウズベキスタンへ行ったんだ。 19歳かその位の頃だった。 本当に衝撃的な体験だった。 そうやって、学校の授業よりも、お金を貯めては自力の撮影旅行へ出かけるようになったんだ。 両親が僕のやることに反対せず、自由にやらせてくれたことは、ありがたかったよ。
どんなところへ行ったのですか?
―ウズベキスタンを中心に、中央アジアへ行った。それから東欧、チェコ=スロバキアやブルガリア、ルーマニア、ハンガリーなどを6ヶ月かけて回ったよ。
その頃から、もう今のような仕事のスタイルが出来たということ?
―そうとも言えるね。
 大学の卒業が近くなったことから、今まで撮った写真を国際的な写真エージェントに売ることを念頭に置くようになった。それで、まず、卒業してすぐにアイルランドに行ったんだ。
アイルランドには何年くらい?
―2年くらい。兵役中に(※韓国では男子に兵役義務がある)軍の調理場担当だったから、料理人として働きながら写真を撮っていた。
 その後、チェコにいったんだけど、そこでは仕事が無かったから、帰国してソウルでしばらく仕事をした。でも、その後またロシアへ行ったんだ。そして、またソウルに帰って、コマーシャルフォトスタジオで働いた。
旅続きですね。
―そう。人生は旅!
 そして、その後、今度はベトナムへ取材へ行った。これが、自分の今の仕事を始めるきっかけになったんだ。つまり、ドキュメンタリー写真を撮ろうと、その時決めたんだ。
なぜそう思うように?
―そこで出会った人たちが、とても理不尽な扱いを受けているのを見たから。彼/彼女らは、一日中、危険な仕事や、手間ひまのかかる仕事をしながら、わずかな賃金しか手に出来ない。そして、そうやって作られたモノは、西洋などの裕福な国で安く売られ、そんな人たちのことが思われることもなく、消費されていく。そのことを実感した。そして、こういう世界の不均衡に、自分自身も含まれていることに気づいた。
ベトナム取材が大きな転機だったのですね。
―そう。ベトナムから帰国して、スタジオの仕事を辞めて、フリーになったんだ。そして、インドネシアへ行った。そこでもやはり、消費社会のために搾取が行われていたんだ。Kawa-Ljenという活火山では、硫黄の塊を運ぶ労働者がいる。彼らは、息もできないくらいの火山ガスの中で、1日に100kg近くの硫黄の塊を肩に担ぎ、歩いて10km以上の道を往復するんだ。それで、手にする給料は1日10ドル。でも僕たちは、そのことを知らないし、考えない。でも実際にこういうことが世界中で行われているんだ。
本当にいろいろなところへ旅をしているけれど、一番印象に残っていることや、影響を受けたことは何ですか?
―そうだな。まずは高校のときに見た、クーデルカの撮ったロマの写真。なにかとても強い「氣」を感じたんだ。あのとき感じた印象は忘れられないし、撮影するときは、少なからず意識しているよ。
―そして、なによりも、旅で見たものや、そこで出会った人々、旅そのものが、自分の人生や写真に大きく影響していると思う。
 さっきも言ったように、世界には大きな不均衡があって、すべての人がそこに関与しているということを、アジアや東欧の特に貧しい地域への旅を通じて、身をもって感じたんだ。 例えば、今着ているこの服、それからこの靴、それから昨日の夕食の材料とか。 そういう自分の身の回りのものが、どこから来ているのか。 それらをたどって行くと、「彼ら」がいる。 皆、全ての人が、繋がっているんだ。 でも、ふだんは誰もそんなことは考えないし、その事実は隠されて、見えにくくなっている。 でも、そのことは、みんな考えなければならないと思うんだ。 だから、僕は写真を撮って、そのことを伝えたいと思うんだ。 そして、取材の旅をすることで、またモチベーションを駆り立てられる。
(Daesungさんの)写真のテーマでもあり、人生のテーマでもあるということ、でしょうか?
―繰り返すけれど、世界はみんな繋がっているんだ。 どこかで誰かが不当な扱いを受けていることに、世界の皆が関与している。 そのことを知らなければならないと思うんだ。特に、その不均衡によって、恩恵を受けている人たちにね。
最近は韓国で写真集を出版したり、CNNに紹介されたりしたけれど、基本的に発表する場は国際的なメディアなのですね。
―韓国には、まだ国際的な大きな写真エージェントがないからね。ただ、特に西洋のメディアの姿勢についてはいつも憤りを感じる。 西洋のメディアは見たいものしか見ないんだ。 もっとセンセーショナルな写真を、もっと強烈なインパクトのある写真を、といつも要求される。 例えば僕が、写真やブックを持っていくと、「まだ弱い!」とつき返される。 貧しい村で、子どもが笑顔で戯れている写真なんかは、欲しがらないんだよ。 もっと、飢えて苦しんでいる人のイメージを持って来いってね。 人々のごく普通の日常は伝えず、あらかじめ考えられた「悲惨」なイメージをつくっているんだ。その方が金になるからね。 でも、それは事実を伝えていることにはならない。 こういう西洋の大手メディアの姿勢に対しても、僕はこれからも闘い続けようと思っている。
旅はまだまだ続きますね。
―ネバーエンドだよ。
この後のプロジェクトは?
―そうだな、またインドネシアに行きたいと思っているよ。ペルピニャン(国際写真祭)にも参加する予定だから、そこに出す写真をまとめているよ。
楽しみです!
では、最後に、日本の学生へ向けて、メッセージをお願いします。
―うーん。 特に、ドキュメンタリーを撮ろうとする人へ向けて言いたいのは、まず、メディアを鵜呑みにしないこと。自分の目で確かめること。自分で経験することが、一番大切。 ドキュメンタリーは自分自身の体験を通して学ぶものだよ。
 次に、自分独自の視点を身につけること。 どうやって物事を捉えるのか、ということ。 それは学校で習ったり、教えてもらえることではないから。 そして同じく、自分独自の写真のスタイルを持つこと。似たようなテーマや被写体に取り組む写真が溢れている中で、自分の画や見せ方のスタイルを作っていくことも大切だね。
 そして、モラルを忘れないこと。 自分の都合で、出会った相手を恣意的に利用することがないように。 パパラッチはだめだ(笑)
 それから、できるだけ時間をかけて、より深く相手を知ることも大切。 時間をかけて、あるいは回数を重ねることで、より深く見えてくるものがあるから。
 そして最後に、もうひとつ別の仕事を持つこと!(笑) あはは、でも本当に、まずは自分が食べていかなきゃならないからね。 写真で生活するのは簡単なことじゃないのだから、ちゃんと生計を立てる方法を考えなきゃ!そうだろ?
大切です。本当に(笑)
ありがとうございました!
Daesungさんは、仕事や写真の話になると、とても熱心に、時にはアグレッシブな言葉で自分の思いを熱く語ってくださいます。一方で、ご本人の言葉にもあったように、Daesungさんは仕事仲間に限らず、出会った相手を大切にしようと、とても細やかな気遣いをなさる方です。
Daesungさんは、パリのエージェンシー(Sipa Press)での仕事のほかに、昨年末、韓国でご自身の3年間の取材を基にした写真集“Dark Land, Bright Hope”を出版されました。2007年から約3年間、ベトナム、インドネシア、インドを巡り、天然資源開発と現地の労働者、その家族の生活を追った一連の写真に、ご自身のことばが編みこまれています。目の前の相手を見つめるDaesungさんのまなざしは、熱くて情熱的な言葉とは対照的に、じっと静かに見つめているような、そんな印象でした。
そしてインタビュー直後、彼が現在籍を置いているエージェントから連絡があり、新たにスイスの新聞にDaesungさんの記事が掲載されたとのことでした。次の取材の旅へももうじき出発予定とのこと。彼の「人生は旅」という言葉通り、これからもカメラを手に世界を飛び回ります。
DaesungさんのHP: http://www.indiphoto.net/
CNNでの掲載ページ: http://cnnphotos.blogs.cnn.com/category/daesung-lee/

▲ページの先頭へ戻る