「タイトル: 豆のスープ/カンボジア3.0」末永旭 写真展

第19回「1_WALL」において、本校卒業生であり本校講師でもある田凱さんが見事グランプリを受賞しました。グランプリ受賞者の特典は個展開催の権利。今回、その個展にお邪魔し、田さんからお話をお伺いしました。

「1_WALL」とは

ガーディアン・ガーデン主催による、若い才能を発掘するための写真とグラフィックデザインのコンテストです。ひとつぼ展をリニューアルし、2009年より新しい公募展として開始されました。

「表現」がますます多様化してきている現在、「表現する」ということに真剣に向き合う人たちと一緒に、新しい表現を考える場にしたいと思っています。そこには、ひとつひとつ壁を乗り越えていってほしいという気持ちと、壁一面に作品を表現してもらいたいという願いをこめました。

ガーディアン・ガーデン

―「1_WALL」挑戦について

年齢制限のことを考え、応募できるうちにしようと思ったのが挑戦のきっかけです。初めて応募した第17回でファイナリストに選ばれましたが、その審査会が終わった後にグランプリが取れなくて悔しいと思いました。もう少し頑張れば取れたんじゃないかと変な自信があったんです。それで第19回に挑戦し、グランプリを取ることができました。

―今回の作品テーマ「生きてそこにいて」について教えてください

在学中、写真評論家である鳥原学先生からいろいろな写真家を教わりたいと思い、フォトクリティークゼミ※を選択しました。ドイツの写真家であるベッヒャー夫妻の工業建築物の写真や、フランスの写真家ウジェーヌ・アジェが残した、20世紀前後の失われていくパリの文化や美しい風景の写真を知りました。ドイツの戦後の給水塔や遺跡と言ってもいいような廃墟など徐々にかっこいいと思い始め、それと共に、なんとなく故郷(中国)でこういう写真が撮れるんじゃないかと思ったんです。故郷は石油の街なんですが、産出量低下に伴い衰退していっているところがリンクし、そこから撮り始めました。はじめは6×6(中判カメラ)で撮っていたんですが、作品に合わないと思って4×5(大判カメラ)にし、今に至ります。5年かけて年2〜3回、それぞれ1週間ほどの滞在中に20〜30枚撮影しました。1枚1枚これを展示すると思ってシャッターを切っていました。
被写体は、この街に住む私の同級生や幼馴染と、街の風景、もうすでに無人の工場や建物内も撮影しています。友人の中にはこの街を離れる人も多く、都会でつまづいて戻ってきても、ここは合わないと再び出るという人もいます。この街の衰退がそれぞれの人生に与える影響は少なからずあって、それがこの街の現状なんです。
※フォトクリティークゼミは、現在設置していません。鳥原先生の授業は、「現代写真論」「映像表現論」「総合写真研究ゼミⅡ」で受けることができます。

―写真の道と本校を選んだきっかけは何ですか?

私も例外ではなく、ずっと幼い頃からこの街を離れて遠いところへ行こうと思っていました。元々アニメ好きだったので、その時は独学で日本語を勉強していました。大学4年のときに日本の企業の説明会があり、面接を受けるために日本語会話教室へ通いました。日本人の先生のもと、日本語の勉強をしました。
来日して機械設計の仕事をしている中で、デジタル一眼レフカメラを買い、日常を記録する写真を撮り始めました。本格的に写真をやろうと学校を調べたら、日本写真芸術専門学校のHPに、日本語を教えてくれた日本人の方を発見!とてもびっくりしました!ここに行くしかないと思い、他も見ずに日本写真芸術専門学校に決めました(笑)

―学校での学びで印象に残っていることは?

作品を撮っている大判カメラは、学校で触ったのが初めてでした。また、鳥原先生から学んだ「写真を読む」という方法は、なかなか勉強できることではないので貴重だったと思います。
現在、この「1_WALL」がきっかけでAXISという雑誌の編集長から声をかけていただいて、インタビューポートレート撮影の仕事をしています。スタジオでの撮影もありますので、スタジオ機材の扱い方から撮影技術まで、学校での学びが活かされています。知識も技術も、全て学校で勉強しましたね。

―現在、本校の講師を担当されていますが、学生やこれから写真を学ぼうと思っている方に伝えたいことはありますか?

今は、インスタグラムなどSNSにアップするために写真を撮るという、新しい写真の撮り方が確立されていますよね。デジタルカメラの画面よりも大きい、スマートフォンの画面で確認しながら撮ることに慣れている方が多いので、今の学生はフレーミングがとても上手いと思います。一眼レフカメラじゃなくてスマートフォンでもいいので、写真をたくさん撮ってください。それにプラスして、撮影で終わりではなく、プリントをして見る習慣をつけてほしいと思います。
写真の学校に入って、大体の人はカメラマンか写真作家になると思うんですが、できればどっちの方向に進みたいのかは考えておいたらいいと思います。後は入学後にたくさん勉強してください。日本写真芸術専門学校にいる先生は、現役で活躍している方ばかりです。授業中でもいつでもどんどん質問して、技術・知識をどんどんつけてください。

―最後に、今回の展示のテーマと別に、撮影しているテーマはありますか?

日本の主要な道路沿いを撮影しています。一番はじめに気になったのが旧東海道なんですが、調べてみたところ、現在の国道1号線になっていることを知りました。昔の伝統を守りつつ、現在は国道になって使用されているということがすごいなと思ったんです。こういう主要な街道・道路を日本全国回って撮影をしようと思っています。

雑誌撮影のお仕事もしつつ、大判カメラを担ぎ全国各地に飛び回るなど、精力的に活動をする田さん。次回の作品も楽しみですね。

写真展情報

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