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【イベント情報】NPIポートフォリオコンペティション受賞作品と総評のご紹介

(02 月 12 日更新)

今回は厳正な審査の結果、審査員の全員の見解として、
グランプリとして選べる作品がありませんでした。
コロナ渦でなかなか撮影もままならない中での制作でしたが、
そういう状況の中では各自奮闘してくれたという印象でした。
この逆境を利用して審査員全員が唸るような作品が、次回は出てくることを期待しています。

 

総評:鳥原学先生

回を重ねてきたNPIポートフォリオコンペティションでグランプリが選出できなかったのは初めてのことで、きわめて残念だ。秀作が揃い過ぎて選べなかったからではなく、それに値する作品が見当たらなかった。たしかに可能性を感じさせ、票を多く集めた作品はあった。だが、いずれも強さに欠けた。準グランプリの2作品がまさにそうで、どちらかを強く推す審査員はいなかった。
このコンペの特徴は作品の枠を限定していないことだ。テーマと手法、そして作品形態は問わない。写真の枠組みを無視してもかまわないし、じつは私たち審査員はそれこそを受けとめたいと願っている。だからこそ、この場で最も大事な価値は、それがユニークであるかどうかだ。「唯一」さは、作っては壊しを繰り返し、手と頭とを動かし続けるなかでようやく見えはじめてくる。自分に何ができて、どんな表現の影響を受けてきたのが理解される。その理解こそが、個性を発揮することに繋がっている。どのような道に進もうと、その体験は必ず生きてくる。
今回の結果は、この一年間の環境の困難さを物語っているのだとは思う。体験的な学習機会に欠け、屋外での撮影もままならない。学生間であるはずの刺激も乏しかった。ただ、この抑圧的な状況から、なにか新しい発見はなかったかをもう一度自問してほしい。人は制約があったほうが創造的になれることは多くの先輩たちが証明している。さあ、あともうひと踏ん張りしよう。そうすればあなたの個性はもっと輝く。

 

 

以下は作品の紹介になります。

先輩たちや仲間たちの作品を観て、
来年度に向けて、未来へつなげられるような思いを持っていただけたら、幸いです。

❏準グランプリ受賞

 

Ⅰ部 3年 写真科 フォトフィールドワークゼミ 川口 珠生「Stand In The Sand」

 

 

「Stand In The Sand」

 

2012年度内閣府中央防災会議において首都直下地震は今後30年の内に約70%の確率で発生すると結論づけた。津波、火災、土砂災害、液状化、あらゆる防災マップを作ることが急務となった。私が中でも違和感を感じたのが比較的歴史の浅い液状化だ。本作は首都直下地震と液状化現象をキーワードに制作したシリーズである。

 

WEB: https://tamaki-kawaguchi.net/

Instagram: @lmatak.k

 

 

講評:村越としや先生

災害といういつ誰の身にいつ降りかかるかわからないことをテーマにしている、しかし作品全体から感じる現実味は薄い、作品中で明確に語られてはいないので見る側の想像になるが、おそらく作者本人が撮影した淡いモノクロ写真と、web上から見つけ出した災害現場の写真を組み合わせていることで、今という現実感をより希薄にせているのだろう。さらに作中、二点の人物写真が使われている、それが誰なのか、何のために撮られた写真なのか、それが何も語られていない、それが作品のポイントである不安感や不安定さをより強く作品全体に与えている。リサーチ型の作品としては資料などが圧倒的に足りない、しかし作品全体を流れる不気味さはいつ起こるかわからない災害を上手く暗示している。

 

 

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Ⅰ部 2年 写真科 総合写真研究ゼミ 陳 文「efes」

 

 

「efes」

 

「南方に暮らす、屋根が尖る」
私の地元の俗語がそう伝わっているが、今まで高層マンション
で過ごした人生は、屋根とは遠い存在である。
何時から屋根のない立方体の住宅が意識の中に根付いたのか。
媒介とした紙とそこに映されたマンションの関係は住宅とそれ
を取り巻くの関係と同じだと考える。その構想に沿って、もう一度
住宅の形を再構成し始めた。
尖った屋根があってこそ、雨は漏れない。

 

Instagram: @chinnbunn

 

 

講評:坂口トモユキ先生

まず装丁の美しさが目を引く。表紙デザインも魅力的だが、それ以上に本文ページも繊細なデザインがなされている。屋根が見えない直方体の集合住宅建築と、架空の屋根にまつわる空想実験的(あるいは工作的)な作品である。トランスペアレンシーを使うことで下地となったビルの壁面テクスチャーと、立体紙工作になった写真(の複写)が心地よく配置され、さらにトランスペアレンシーをめくって見る動作もまた、鑑賞者に小さな驚きを与える。写真を立体にした作品は稀に見かけるが、この作品は陰影のあるビル壁面や視覚上のパースによる錯視効果をうまく利用しており、見る目が楽しい。そして、何よりも面白いのは、こういったギミックがあってなお、そこに写っている集合住宅の外壁をより素直に、極めて写真的に観察してしまうことだろう。

 

– 審査員賞 - 

❏大和田良賞

Ⅰ部 1年 写真科 蒲 晨詩「BEAUTY IN THE RAW」

 

 

講評:大和田良先生

一枚一枚のイメージの強度が高く、それらが綿密に編まれた一冊の写真集からは力強さと共にしなやかな表現力が感じられました。見開きにおける写真の対比や、カラーとモノクロのバランスなど、高い編集能力が生かされた構成になっており、作者の技量の高さが伝わるポートフォリオとなっています。デザインやトーンの仕上げにも、ウォルフガング・ティルマンスやヴィヴィアン・サッセンといった雑誌や写真集上における表現を重ねてきた写真家の文脈が感じられ、現代写真としての評価も行える意欲的な作品だと言えるでしょう。さらに実験を重ね、自分なりの世界観を確立することで、強い個性を発揮できる可能性のある作家だと思います。

 

 

❏坂口トモユキ賞

Ⅰ部 2年 写真科 ネイチャーフォトゼミ 内田 淳「あにまにま」

講評:坂口トモユキ先生

視覚的にも手にとっても楽しい作品である。タイトルは造語だそうで、その意図も書いてあるが、そこは見る人の自由に委ねたほうがいいだろう。望遠鏡でジャングルの野鳥を眺めるが如く見る、ビルに紛れた室外機たちの佇まいはなんとも愛嬌があり、ゲーム内のバーチャル探索をしているような楽しさもある。その絶妙な心理効果をもたらしたのは円形カットの妙である。審査会では自然発生的に誰もが「うちわ」と呼んでいた愛すべき作品である。願わくは、もっと精査して、より上質の室外機の佇まいをコレクションしていってほしい。

 

 

 

❏菅沼比呂志賞

Ⅰ部2年 写真科 コマーシャルフォトゼミ ダビラ マルティネス ジョルダニ セバスティアン「姚」

 

 

講評:菅沼比呂志先生

ダビラくんからは、今回6冊のポートフォリオの応募があった。その熱量にも驚かされたが、それぞれのポートフォリオのクオリティもなかなかである。日本での生活の中で撮影されたものから、カナダでの家族との様子、上海への旅を撮ったものから撮影地も様々である。その中で異色だったのが「姚」だ。どこの誰かは明かされていないが、旅で出会った女性との6日間の出来事を写真にしている。シチュエーションを変え、この先どうなるんだろうかと、見る側を飽きさせることなく、彼の旅の追体験をさせてくれる。写真というメディウムの力を生かした作品である。

 

 

❏鳥原学賞

Ⅰ部 1年 写真科 五味田 琳子「感染」

 

 

講評:鳥原学先生

ずいぶん作りこんだものです。遊んでいるうちに、しだいに真剣になっていった。そんなプロセスが想像できますが、もしそうならたいへん宜しいことです。感心したのは文章によってずいぶん写真が生かされていたことです。写真だけだと怖そうな雰囲気だけで終わっていたでしょう。言葉が実体のない空気に具体性な感触を持たせました。近年人気のジャパニーズ・ホラーというより、さらに昔の「実録心霊もの」に近い感じがします。用紙の選択と使ったフォントのためだと思いますが、全体的にちょっと貧相な感じがします。子どもの頃、夏休みになると見ていた「あなたの知らない不思議な世界」の再現ドラマとか、つのだじろう先生の「恐怖新聞」などを思い出させてくれました。ありがとう。

 

❏フジモリメグミ賞

Ⅰ部 3年 写真科 総合写真研究ゼミ 大須賀 馨「隣の幻」

 

 

講評:フジモリメグミ先生

「隣の幻」というタイトルと、ポートフォリオの中に散らばる英語のテキスト文、連写のようなイメージの連なり。正直言って、なにを伝えたいのかいまいち掴めない作品だったが、ページをめくるほどに彼の世界に引き込まれていった。次はなにをみせてくれるのか、見えないなにかを予感させていく魅力を強く感じる。彼にとっての幻とはなんなのか、写されたものに特別なものはないのに、なんとなくその「幻」に共感をしてしまう。

 

 

❏村越としや賞

Ⅰ部 1年 写真科 窦 宇嘉「Regular×Random」

 

 

講評:村越としや先生

単純な自然と人工物の対比ではなく、作者の発見や出会いが作品に奥行きを与え、モノクロでハイトーンのプリントは写っているものたちの輪郭をはっきりと浮かび上がらせ作者が何を見せたいかをしっかり提示出来ている。二元論的な見せ方にならず、規律とランダムの間にあるグラデーションを上手く見せていると好意的に受け取ったが、これは本人が意図的に仕組んだものなのか、現段階ではこれが精一杯の対比だったのかで、今後の発展に大きな違いが出てくるだろう。