広告フォトグラファー/陳明剣
「日本で写真を学びたい」「世界で活躍したい」——そんな夢を抱く人へ。
留学生として日本写真芸術専門学校で学び、NIKEをはじめとするブランドのメインビジュアルを手がけている、陳明剣さんにお話を伺いました。

ーー簡単に経歴を教えてください
母国の中国の大学では、グラフィックデザインを専攻していました。大学で写真を撮り始め、大学卒業後、2016年に来日しました。JCLI日本語学校(現:早稲田EDU日本語学校 王子校)で日本語を学び、2018年から2020年まで日本写真芸術専門学校に通っていました。
卒業後は、母国である中国に帰国して、カメラマンとして働き始めました。
2022年に自分のスタジオを立ち上げて、今は中国で広告写真などの商業写真を撮影しています。

ーー現在の仕事内容について教えてください
コマーシャルフォトグラファーをしています。
主に、広告のメインビジュアル(KV)や芸能人のイメージビジュアル、ブランドのlookbook、それから雑誌などの撮影をしています。



ーー世界の現場で感じる、写真の醍醐味は?
街を歩いている時やショッピングモールを訪れた時に、ふと自分が手がけた作品を見かける瞬間があります。そのたびにとても嬉しい気持ちになりますし、多くの人が行き交う場所で、自分の撮影したビジュアルが実際に使われているのを見ると、大きな達成感と、この仕事を続けてきて良かったという実感が湧いてきます。
ーークライアントワークで意識していることがあれば教えてください
仕事をする上では、誠実さが一番大切だと思っています。
商業カメラマンなので、お金を稼ぐことも大事ですが、それ以上に、クライアント一人ひとりに100%の真心で向き合いたいと考えています。おかげさまで、「いつ連絡しても回答が早いし、すぐに問題を解決してくれてとても助かる。」とお褒めの言葉をいただく機会が多いです。

ーー写真のお仕事に携わっているからこそ得られたスキルや技術があれば教えてください
写真という仕事を通じて、私は完全に計画を重んじる「J人」タイプになりました。
「J人(J型人格)」とは、MBTI性格診断において「Judging(判断)」タイプを指し、計画性、組織力、結果志向を重視する人々のことです。突発的な変化よりも整理された状況を好み、期限を守ることを大切にする傾向があります。
物事を前もって計画する習慣がつき、プライベートの旅行でも詳細なスケジュールを作成し、1日の流れをしっかり管理するようになりました。
ーー仕事で大変だったと感じたことはありますか?
ロケーション撮影では、天候に左右される事が多く、なかなか計画通りに撮影が進まない事が多く発生しますね。
一見華やかに見える撮影の現場ですが、体力的にも精神的にもハードな面があります。 体力面で言うと、標高5,000メートルの雪山で高山病と戦いながら雨に打たれてシャッターを切ったり、45度の夏日に熱中症で倒れそうになりながらカメラを回したり。忙しい時は、1日の睡眠が3時間なんてこともよくあります。
精神面では、クリエイティブな仕事だからこその葛藤があります。[自分の写真最高!]→[満足]→[壁にぶつかる]→ [自分への疑い]→[どん底]→ [変化と成長]→[再び、自己肯定]というサイクルを、だいたい1年周期で繰り返しながら進んでいます。

ーー日本で写真を学ぼうと思った理由を教えてください
日本の美学に惹かれて、日本を選びました。
大学時代にグラフィックデザインを専攻していた為、多くの日本のデザインに触れる中で、日本独特の美意識に強く惹かれていきました。
中でも影響を受けたのが、グラフィックデザイナーの原研哉氏の思想でした。
愛読書の一つが、『Designing Design(デザインのデザイン)』です。
同書は、デザインを単なる見た目の美しさではなく、「物事の見方そのものを設計する行為」として捉え直した一冊で、日本の美意識や“余白”の考え方などにも触れながら、日常の中に新しい価値を見出す視点の大切さを説いています。
ーー進学先をNPIに決めた理由を教えてください
留学生向けの進学相談会でNPIの存在を知り、体験授業を申し込みました。NPIのオープンキャンパスで、詳しくお話を聞いて、その場ですぐに「ここだ!」と決断しました。
ーーNPIでは、どんなことを学んでいましたか?
写真に関するあらゆる知識を学び、この2年間の学生生活を通して、ようやく自分なりの表現の軸を構築することができました。

ーー学生時代はどんな作品を作られていたんですか?
スナップ、風景、ファッションなど幅広く撮影してきましたが、メインは、ファッションポートレートゼミを専攻していた為、モデルを起用したファッションポートレートの作品を制作していました。

ーー印象に残っている授業や先生はいますか?
一番印象に残っているのは、大野隼男先生の授業です。
大野先生はいつも多くの機材を教室に持ち込んで見せてくださり、ライティングの技術を丁寧に教えてくださいました。写真に対する先生の真摯な姿勢に心を打たれ、「自分も将来フォトグラファーとして、100%の誠実さで仕事に向き合おう」と決心しました。 卒業して中国へ帰国する際、空港で待機していた時に、大野先生から中国語でメッセージが届きました。
「年轻时要面对很多挑战和羞耻感。这样你就可以成为一个很好的摄影师」
その言葉は、仕事でスランプになったり、壁にぶつかるたびに、今でも私の背中を押してくれます。
ーー学生時代に力を入れていた活動はありますか?
自主制作の作品には、多大なエネルギーを注いできました。

ーー在学中にこれはやってよかった、逆にやっておけばよかった事はありますか?
在学中に有志で参加した文化服装学院ファッション流通科スタイリストコースの学生たちとの作品制作です。スタイリストを目指す学生さんの好みをヒアリングし、どのような作品を制作するかを話し合い、撮影に挑みました。非常に学びの多い経験となりました。


ー陳さんは、卒業後、すぐに母国の中国へ帰国していましたね。就職活動について教えください
卒業した2020年3月は新型コロナウイルスが流行し始めた時期で、卒業後はすぐに帰国しました。
3月中旬に帰国し、ホテルでの2週間の隔離期間中、ずっと履歴書を送り続けました。4月から面接を受け始めたのですが、
ある会社のディレクターから「新卒ならまずはアシスタントから始めるべきだ」と言われました。私はこう答えました。
「私のポートフォリオをご覧いただければ、撮影経験が十分にあることは理解いただけるはずです。ただ、商業撮影の機会が欠けているだけです。今の私はいわば『真っ白な紙』のような状態ですが、それは大きな利点でもあります。既存のカメラマンのようにスタイルが固まっておらず、非常に高い可塑性を持っていますから。」
この言葉が決め手となり、無事に初めてのフォトグラファーとしての仕事が決まりました。
ー新卒1年目から2年目の間にどのような経験をされたのか教えてください
会社の先輩方と一緒に参加する撮影は、そのすべてが学びの連続でした。
商業撮影の現場は、学校の教室よりもはるかに直感的です。撮影プランの企画、スタッフとの調整、現場のディレクション、そしてレタッチの管理まで、これらはすべて時間をかけて積み重ねていくべき経験だと実感しています。

ーー学生時代の経験が今に活きているなと感じることはありますか?
学生時代に数多くのフィルム撮影に触れ、それぞれのフィルムが持つ特性を深く理解しました。
その経験が、現在のレタッチに非常に大きな助けとなっています。

ーこれから挑戦するあなたへ
年轻时要面对很多挑战和羞耻感。这样你就可以成为一个很好的摄影师
若い時はたくさんの挑戦と恥ずかしさに直面しなさい。
そうすれば、きっと良いカメラマンになれます。