篠原諒(2年制昼間部写真科)
聞き手/日本写真芸術専門学校 広報 佐藤
「お城」と「俗なもの」を一緒に写すおもしろさを求めて
Q. 今回の卒業制作はどのようなテーマで撮りましたか?
テーマはお城の写真なんですが、普通のお城の写真って観光的な目線で、歴史的なロマンを追い求めて撮ったものが多いですよね。
そういう写真は多くの人が共有している視点です。僕が撮ったのは、お城の周りにあるお店やコンビニやドンキホーテといった「俗なもの」と一緒に映した写真です。こういう視点はあまりなくて、面白さが生まれると確信しました。
Q. そのアイデアはどこから来たのですか?
インスピレーションを受けたのは、山梨県でコンビニ越しに富士山が見えるスポットに観光客が殺到してしまったので、黒い幕を張って景観を遮る措置が取られたというニュースです。それを見て、現代の俗なものや風景と歴史的なシンボルを一緒に映したら面白いだろうと思って。
また、藤原慎也さんという写真家の『俗界富士』という写真集を見て、国道から見た富士山とか、家の窓越しに見える富士山とか、日常の中に現れる富士山の捉え方にも強い影響を受けました。こうしたアプローチを参考にしながら、お城という題材に置き換えて撮影してみようと決めました。
“ドンキ” や “ファミマ” とお城の化学反応
Q. 「俗なもの」との組み合わせで何を伝えたかったのですか?
お城というのは昔の人の権力や歴史の象徴ですが、それが今の時代のファミマやドンキと同じ風景の中に存在している。武士が生きた時代には絶対になかったものと並んでいる。ある種のタイムパラドックスみたいな面白さがあって。
観光地としてお城を見に行った人は歴史的なロマンを感じるけど、そのすぐ近くに住んでいる人にとっては普段の日常の景色で、多分あまり意識もしていない。観光と日常が同時に立ち上がる感覚や、歴史と生活が同時に知覚される瞬間をそのまま写真にしたかったんです。
Q. 具体的にはどうやって撮影場所を見つけていったのですか?
地図アプリを用いたり、現地を歩き回ったりして、お城と一緒に写ることで写真として深みが出そうな場所を見つけては撮っていく感じです。身近であればあるほど、お城との隔たりが感じられて面白い絵になる。カメラのキタムラとドンキホーテの写真は特に気に入っています。
「お城の写真家といえばこの人」と名前が挙がるようなカメラマンになれたら
Q. どんなエリアを撮りましたか?
全11枚の作品なのですが、本州各地を回りました。長野県の諏訪や上田、千葉、岐阜、甲府、関西方面では大阪、姫路、広島など、全部違う場所です。なるべく被らない方がいいかなと思って、できるだけ各地を回りました。
Q. 制作のスケジュールはどのように進めたのですか?
最初は王道な作風で行こうかとも思ったんですが、普通すぎて。藤原さんの写真集を見たときに「こっちの方向で行こう」と決まって、夏休み前ごろにはコンセプトを固めていました。そこから撮影旅に出る形で制作を進めました。
Q. 特にお気に入りの一枚は?
カメラのキタムラと上田城が一緒に撮った写真です。カメラマンが撮った作品の中にカメラ屋が写っているというのが面白くて、気に入っています。
Q. お城の写真はこれからも続けていきますか?
今後も継続して取り組んでいきたいと考えています。もちろん王道的な城郭写真も撮影しているので、将来的には「お城の写真家といえばこの人」と、名前が挙がるような城郭写真家になれたらいいなと思っています。歴史や地域文化、観光などと結びついた形での発信にも積極的に関わっていきたいです。