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カメラは“道具”だけど、使い込めば“相棒”になる。【プロに聞くカメラの話】 – 林憲治

2025/8/28

静かに、でも確かな眼差しで世界を切り取る。
時代が変わっても、写真の根っこにある「見ること」「感じること」を大切にしてきたカメラマンがいる。

林憲治さん。
1972年に写真の世界に入り、以来ずっと、広告の現場でシャッターを切り続けてきた。
ヤナセ、サンオート、河合楽器、資生堂等の名だたるクライアントのビジュアルを手がけながら、その写真にはいつも“過剰じゃない強さ”がある。
そんな林さんが使うカメラは『ハッセルブラッド』。
正方形のフレームに、余白と緊張感を共存させることができるカメラだ。

~林さんが手掛けてきた仕事の写真~

決して派手ではないけれど、だからこそずっと見ていられる。そんな写真だ。

2009年からは日本写真芸術専門学校の主任講師として、次の世代にも写真の面白さと向き合う覚悟を伝えてきた。
「写真ってなんだろう?」と思っている人にとって、林さんの言葉や仕事には、考え方のヒントがぎっしり詰まっている。

写真を始めたばかりの人も、カメラからちょっと離れていた人も…
林さんの写真や考え方に触れてみると、また何かを撮りたくなるきっかけがあるかもしれない。
今回はそんな林さんに、カメラ『ハッセルブラッド』の話を聞いてみた。

仕事における機材で重視している点は何ですか?

やっぱり“信頼性”ですね。僕は長年ハッセルを使ってきましたけど、現場でトラブルが起きて撮影できない、ということが一度もなかった。ちょっとした不具合なら自分で直せるのも強みでしたし、「必ず撮影して帰れる」という安心感はとても大きかったです。メンテナンスのしやすさや、フィルムの交換が片手で済む使い勝手の良さも魅力でした。

撮影中に大切にしていること、意識している瞬間はありますか?

商品でも人物でも、求められる精度やクオリティに応じて機材を選びます。特にピアノや車など大型で反射の多い被写体には、4×5の大判カメラを使ってじっくり撮る。モデル撮影のときは、その一瞬の表情やポーズの“決まり”を逃さないように集中しますね。いいモデルだと、本当に数枚で決まっちゃうんです。そういう時は撮っていて気持ちいいです。

ハッセルを使い始めたきっかけや、初めて触れたときの印象は?

僕の師匠が使っていたのがハッセルだったんです。当時は50万円もする高価なカメラで、自分では買えなかった。でもその師匠が「空いてるときは使っていいぞ」と貸してくれたんですね。その頃の50万円って、今の100万円以上の価値ですからね。本当にありがたかった。使ってみて「これしかない」と思いました。ブロニカもマミヤもありましたが、やっぱりハッセルの完成度は段違いでした。

撮影中のトラブルや制約の中で、ハッセルが役立ったエピソードはありますか?

スタジオでも屋外でも、ハッセルで困ったことは本当になかったんです。昔のブロニカはよく現場で壊れましたけど、ハッセルはそれがなかった。安心して使える。そこが大きいですね。現場でサッと対応できる操作性と信頼性、どっちも兼ね備えているカメラです。

気に入っている、よく使ったレンズは?

120mmのマクロプラナーですね。F5.6からF4に変わって、より使いやすくなった。商品撮影でも人物でも万能に使えました。他にも40mm、50mm、80mm、150mmといった焦点距離のレンズは使いましたけど、やっぱり120mmが一番好きでした。

ハッセルの設計者に会えるとしたら、どんな話をしてみたいですか?

「どうしてこんな機構にしたのか」とぜひ聞いてみたいです。メカニカルに完成された構造で、電子制御もなくシャッターが連動して動く。今見ても、あのシャッター機構は感動しますよ。右左が逆に見えるファインダーには最初戸惑いましたけど、慣れれば問題ないし、むしろ面白い。僕らは、自分で作れないことが分かっているから、与えられたものにどう対応するかを考える。そういう意味では、よくできたカメラに心から感謝したいですね。

カメラを始めたころを振り返って、どんな気持ち・状況でしたか?

最初はメカ好きだったんです。家の中の壊れた機械をいじって直したり、小学生のときにはスピーカーを囲んで音の変化を楽しんだり、自分でスピーカーを作ってみたり。音波の仕組みなんかも独学で理解しようとしていました。メカを触ることが自然と好きだったから、カメラもごく自然な流れで好きになったのかもしれないですね。

カメラを手にするこれからの人たちに、メッセージをお願いします。

今は便利な時代で、デジタルも進化していますが、メカの良さもぜひ味わってほしい。どんなカメラでもいいけど、一つの機材をとことん使って、自分の手に馴染ませるまで使い込んでほしいです。そうすると、道具と“対話”するような感覚になってくる。僕にとってハッセルは、まさにそういう存在でした。

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